Oguma Makoto
小熊 誠 教授
Profile
人びとの生活で、「つながり」は重要な関係をもっています。家族のつながり、親戚のつながり、先祖のつながり、近所のつながり、職場のつながりなどさまざまですが、それは地域や時代によって異なり、民族によっても違います。このような社会的つながりについて、沖縄も含めた日本、そして東アジアで考えます。
生年/1954年
出身地/横浜です
血液型/O型
家族構成/フィリピン華僑の妻と二人の娘。長女は昨秋お嫁に行きました
趣味/中国茶、旅行
子供の頃の夢/シュバイツァーのような医師になること
尊敬する人/父と学恩を受けた先生方
愛読書/柳田国男『海上の道』
休日の過ごし方/長期休暇には、海外旅行に行きたいなという願望があります
好きな映画/中国映画
好きな音楽/「さとうきび畑」、THE BOOMの「島唄」、BEGINなど沖縄にまつわる歌。ちなみにMONGOL800のボーカル・上江洌君は沖縄国際大学に勤めていた頃の学生で、卒業式では私が卒業証書を手渡しました
好きなTV番組/大河ドラマ、朝の連続テレビ小説、クイズ番組
好きな著名人/イチロー
好きな食べ物/甘いもの
好きな国/中国(調査で毎年数回行きます。スケールが大きいし、面白い)、イギリス(研修でロンドンに1年間住みましたが、住みやすい国です)
グローバル化が進む世界で大切なのは、自国の文化を客観的に見ることです。
日本の常識=世界の常識、ではない!
日本人として日本に住んでいると、普段あたりまえだと思っていることがたくさんあります。しかし、それらのなかには外国ではあたりまえでないことも多い。私が担当している全学科共通科目の「民俗学」の講義では、沖縄の民俗文化を中心に、日本本土と中国の民俗を紹介し、東アジアの視点で自分たちの文化を相対化して考える試みをしています。日本では常識と思われていることも、東アジアの民俗文化と対比すると、違いが浮き彫りになってきます。その違いを見て行くことで、日本の特性を明確にし、日本の民俗文化の特徴について客観的に考えてもらうことを目標にしています。
たとえば、お彼岸のお墓参り。現代の日本では春分と秋分の日を挟んで3日間にお墓参りをするのが普通ですが、中国では3月末から4月初めの清明の季節にお墓参りをしますし、韓国では中秋にあたる秋夕にお墓参りをします。なんと沖縄では、もともと旧暦正月十六日がお墓参りの日でした。今では、中国の影響で清明にお墓参りをするようになっていますが、離島などに行くとまだ正月十六日にお墓参りをしています。位牌もそれぞれの地域で異なります。韓国では、紙の位牌で、祖先祭りをするたびに書いて、それを燃やします。西洋では、位牌すらありません。位牌に象徴される「祖先」という概念がないからです。それは、キリスト教などの宗教と深く関連します。
位牌だけを取り上げても、文化の違い、そして文明の違いまで考えることができるのです。このように、毎時間、何らかの気づきのある「目からウロコ」の授業をしていきたいと思っています。
知識を整理するだけでなく、自分の頭で考えることこそが重要
私は神大に赴任する以前、沖縄の大学に23年間勤めていました。そこで沖縄の魅力と悲哀を味わいましたが、魅力のほうを多く皆さんに伝えたいと思っています。
私の研究テーマのひとつに沖縄の「門中」があります。門中とは、父系血縁でつながる親戚のことです。清明の墓参りには、何百年も前の祖先をお参りするために、何百人もの門中の人が集まることがあります。「家譜」という門中の記録があるからです。小さな門中もたくさんあります。どのようにして門中が形成されたのか、門中とは現代の沖縄の人にとってどのような意味を持っているのか。門中の歴史的形成と現在の門中のあり方を、中国や日本と比較しながら研究を進めています。
また、沖縄には今でも風水に関する風習が残っています。家屋や墓を造るときに、方角や日取りを専門家に見てもらったり、T字路の突き当たりに「石敢当」という魔よけを置いたりする風習は、風水と関連しているのです。風水は、近世に中国から沖縄に導入されました。当時は風水の勉強のために中国へ留学生を出し、風水を学んだ人たちが高級官僚として政治を動かしていました。風水を使って国家運営をしていたというわけです。しかし、その後の時代の流れのなかで中国との関係は弱まり、現在では独自の変化を遂げた風水の沖縄化が進んでいます。このように家系なり風水なり、ひとつ共通するキーコンセプトについて比較してみると、国による違いがよく分かってくるのです。
沖縄は日本の周縁ですが、そこからは日本も中国もアメリカもよく見ることができます。日本を、そして自分を客観的に見ることが、グローバル化の進むこれからの時代に必要なことだと私は思っています。
客観的に見つめることで日本文化を理解し、日本のいいところや逆に変えた方がいいところを自分の頭で考える。授業では、ただ単に知識だけを教えるのではなく、そうした民俗学の精神も伝えていきたいと思います。さまざまな情報を得て、それを整理するだけでなく、それに関して「自分でどう考えるか」。学問という側面だけに限らず、大切なのは「自分の頭でものを考える」ことなのです。
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