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想定外を想定する。それがエンジニアとしての私の使命。星野 恵以子さん/ヤフー株式会社/東京都出身

想定外を想定する。それがエンジニアとしての私の使命。星野 恵以子さん/ヤフー株式会社/東京都出身

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起業家の友人と熱血先生との出会い

小学生の頃からパソコンを使って絵を描き、ブログや掲示板で公開していた私にとって、インターネットは身近な存在でした。数学が得意だったこともあり、情報系の学部への進学を検討していたときに見つけたのが工学部の情報システム創成学科。ここなら、好きな「ものづくり」という観点から、社会を支えるシステム作りを学べるのではと知的好奇心がくすぐられ、また、総合大学だからさまざまな専攻分野の人たちと交流できるのが純粋に楽しみで、進学を決めました。
そして出会った2人の存在が、今の私を形作ってくれています。
一人目は、学生ながらアプリ開発・運営の会社を立ち上げ、経営していた起業家の友人です。ある日の授業終わりに初めてその話を聞いたとき、「大学生なのにそんなことして大丈夫なの!?」と内心驚きました。しかしよくよく聞いてみると、彼女が提供しているのはまさに今の社会で求められていること。そのアプリとは、心や体の問題で悩みを抱えながら誰にも相談できず、誰に相談してよいかも分からず困っている女性を対象とし、一人ひとりに適したカウンセラーを紹介し、簡単なカウンセリングを行うというマッチングサービスでした。「私はまだそこまではできないけど、いつかは友人と同じように、人や社会に働きかけて喜んでもらえるような開発者になりたい」という思いが芽生えました。
もう一人は、研究室の指導教授だった秋吉政徳先生です。秋吉研究室では、さまざまな企業から依頼されたプログラム開発を課題として研究が進められていました。私が担当した案件は、特許出願をより簡単に速く正確に行うための検索システムの開発でした。研究室に入りたての私は、解決法もプログラムの書き方もほとんど分からず、悩んでいるうちどんどん時間ばかりが過ぎていきます。でも、納期は絶対です。先生からは「なぜそう考えるのか? なぜそのプログラム設計をしたのか?」と毎日のように「なぜ?」を投げかけられます。研究成果を学内外へ発表するための資料を作成している際も「その説明はなぜ必要なのか? 予備知識のない人がこの資料を読んで理解できると思うか?」と指摘されてばかりいました。「ではどうすればいいですか?」と質問しても、先生はその答えを決して教えてくれないんですよね。学生自身が考え、最善と思われるアプローチや手法を見つけ出すまで、「なぜ?」は止まりません。しかしどんなに厳しい言葉をかけても、先生は決して私のことを見放しませんでした。まるで面倒見の良い熱血上司のように、私が企業相手の課題をやり遂げるまで、ずっと寄り添ってくれました。おかげで在学中から、社会に実在する課題をプログラム開発で解決する力を養うことができ、その過程で感じたやりがいと厳しさが、WEBエンジニアとして社会に貢献したいという志につながりました。

想定外では済まない開発に携わる責任

私が現在携わっているのは、さまざまな広告代理店や広告主が出稿するヤフー広告の広告管理ツールの開発です。例えば、「競合他社のWEB広告に搭載している機能と同等あるいは超える機能をヤフーでも追加してほしい」という要望が寄せられたとします。それを受けて、企画開発プロジェクトを立ち上げ、メンバーを招集してチームを形成し、世に出すまでの一切をマネジメントするのが私の役割。大変なのは、バグと呼ばれるプログラム上の誤りやエラーがいくつも見つかり、その改修対応でリリース予定日に間に合いそうにないという状況に追い込まれたとき。メンバーはもちろん上長にも相談しながら、限られた時間の中で解決策を模索する作業に追われます。
そんなときに思い出すのは、かつて秋吉先生から「なぜ?」と常に問われ続けていた日々です。誰も答えを持っていない状況の中で、分からないなりに考え、なんとか解決策をひねり出す。それはもちろん苦しい作業ですが、「なぜ?」と追及していくうちに、置かれている状況や目の当たりにしている課題が整理されて、目指す到達点と今やるべきことがクリアになってくる、その思考の道のりは苦しいなりに楽しく、達成感を得られるまでになりました。この壁を越えた先に、新しいサービスやシステムを世に送り出すことができると想像すると、開発者魂が燃えてきます。
そうした現場にいると、秋吉先生の「なぜ?」の意味が少し理解できたような気がします。それは「想定外を想定する」大切さ。もし銀行の入出金を管理するプログラムを開発し、バグを見逃したままリリースされてしまったとしたら、「想定外だった」では済まない事態に陥ります。「誰も手がけたことのない新しいものづくりやチャレンジには、必ず想定外の事態や失敗が発生するもの。その想定外をどこまで想定できるかが、本当に社会に役立つプログラムを開発するということなのだ」。起業家の友人の存在や、秋吉研究室での日々が、そうした声になって私の心に響いている思いがします。その声を常に胸に抱き、考えに考え、考え尽くしながら、社内外から信頼されるプロジェクトマネージャーとして独り立ちすることが目標です。

※内容はすべて取材当時のものです。
工学部情報システム創成学科(2023年度より情報学部システム数理学科)卒業

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