学長からのご挨拶

学長 小熊 誠/Oguma Makoto
創立者 米田吉盛による「建学の精神」の書

神奈川大学は、今、変化の中にいます。2020年度に国際日本学部を新設し、2021年度にはみなとみらいキャンパスを開設しました。みなとみらいャンパスには、国際経営学科を擁する経営学科、そして外国語学部と国際日本学部を集結させました。続く2022年度には建築学部を新設し、さらに、2023年4月からは、理工系学部の再編として理学部が横浜キャンパスに移転します。これを機に、理学部、工学部のリニューアル、そして「化学生命学部」「情報学部」の新設と、来るべき100周年とその先を見据え、本学創立以来最大規模とも言える改革を進行中です。

このような本学の姿勢は、1928年に創設された当時から受け継ぐ「伝統」に裏打ちされています。創設者の米田吉盛先生は、「中正堅実」な青年を世に出すことを目的に本学を創設したと語っています。「中正」とは偏った思想を持たないということで、真理に基づいた考えを「堅実」に育むことを意味しています。この目的のために、本学が掲げた教育方針が「質実剛健」と「積極進取」です。「質実剛健」とは、堅固な思想を持ち、真理に対して誠実で正しい信念を貫くことで、正しい学問に取り組む大学の理念を示しています。「積極進取」とは、自由な発想を持って自ら積極的に新しい物事へ取り組んでいくことを表し、未来の変化に立ち向かう学生、大学人に必要な理念です。以来、神奈川大学は、少人数教育と人間形成を基本に、「人を造る」教育を行ってきました。さらに、この建学の精神を現代的に展開させて、「質実剛健」は基礎的学力および体系的専門科目をきちんと教えるためのアカデミック教育を行うこと、そして「積極進取」は、社会・産学連携などを通して、良識ある判断力と実践的能力を育むソーシャル教育を展開したいと思います。

この伝統を大切にし、大学として、新しい社会に対応する教育を開拓することが大切です。今後は、ハードの改革以上に、中身をどのように変えていくかが重要となります。具体的には、本学の100年近くに及ぶ歴史を踏まえ、ゼミ・卒業研究等の少人数教育という伝統を大切にしたアカデミックな教育・研究を着実に行っていくこと、そして地域や企業など社会との交流を豊富に取り入れ、体験型学習や課題解決型学習などのソーシャルな教育・研究を積極的に行っていくこと、この両方ができてはじめて建学の精神を踏まえた真の実学が実現します。100周年、そしてその先も、選ばれ続ける大学となるために、教職員一丸となって神奈川大学の教育力を高める改革を進めてまいる所存です。

創立60周年事業の柱として誕生した湘南ひらつかキャンパスにつきましては、理学部の移転をもって34年の歴史に幕を閉じることになります。しかし、そこで培ってきた叡智を、開港から常に国際都市として発展してきたYOKOHAMAに結集することで、これまで以上に総合大学としての横の繋がりを強化し、世界的な視野から論理的、科学的に思考できる人材を育成してまいります。

現在、世界では未だ終息をみない新型コロナウイルスの蔓延、国家間の対立、環境問題など複雑で解決困難な課題が山積していますが、日本から世界につながる窓口として発展しているYOKOHAMAで、本学の地球規模で物事を考えるグローバルな教育・研究により、日本を学び、世界を学んでほしいと願っています。

神奈川大学長  小熊 誠