長尾健・龍村学 対談イメージ
過去・現在・未来をテーマに興味深い内容となりました。
対談者紹介

龍村学
2003年法学部法律学科卒業。その後、一年間の練習生期間を経て社会人のオービックシーガルズに入団。2005年春季途中からスターター(先発出場選手)となり、チームをパールボウル優勝に導く活躍でMVPを獲得。秋季には、史上初となるリーグ優勝・社会人王者・ライスボウルと合わせた四冠を達成。二部リーグ校出身者としては、初の日本一QB(クォータバック)に輝く。

 
長尾健
経済学部貿易学科4年。今年度の主将を務め、創部以来初となる関東一部リーグ昇格を達成。自分より大きな相手にもぶつかっていくハートの強さが信条。ポジションはディフェンスの要、LB(ラインバッカー)

パールボウル=春季に行われる、東日本社会人チャンピオンを決めるトーナメント戦。
リーグ優勝・社会人王者・ライスボウル=社会人リーグ(Japan Xリーグ)はEAST・WEST・CENTRALの3ブロックで構成。リーグ戦後それぞれのブロック上位2チームが進出しトーナメント戦を行い、社会人王者が決定。その後、学生王者と真の日本一をかけて対戦するのがライスボウル。オービックシーガルズはCENTRALに所属。
QB(クォータバック)=攻撃の司令塔となるポジション
LB(ラインバッカー)=状況により様々な役割を担う守備のポジション


高校時代 アメフトとの出会い
写真1

――お二人とも高校からアメフトを始めたそうですが、そのきっかけや思い出があれば教えてください。

「小・中学時代は9年間野球をやっていましたが、高校からは何か新しいものを始めようと思っていたので。アメフトを選んだのは、見た目のカッコ良さに興味をひかれたから。思い出は特にないですけど・・・わいわいと仲間内で楽しくやっていました。」

「中学までは本腰を入れてクラブ活動をやっていなかったので、高校入学を機にスポーツを始めようと思って。自分もアメフトのカッコ良さにひかれて、興味本位で始めました。部員数が少なかったので、攻撃と守備の両方をやらなければいけなくて苦しかったのですが、今ではチーム全員でやれたのがよい思い出になっています。」

攻撃と守備の両方=通常、アメフトではそれぞれ専門の選手がいる。攻撃権を得るたびに攻守がはっきり交替し、一度に参加できるのは11人。


大学生活・・・アメフトが全てでした

――お二人は、同時期にアメフト部に在籍されてましたね。当時のお互いの印象などは、覚えていますか?

「龍村さんは自分が1年生の時の4年生でした。」

「悪いけど、あんまり覚えてないな(笑)」

「ひどいなぁ・・・ 当時の4年生はみなさん厳しくて、オーラが出ていたような人ばかりでしたが、タツさんはつかみ所がなくて何かよくわからない人でした。親しく話せるようになったのはだいぶ経ってからです。プレーの印象は、死角からタックルにいってもクルッとかわされて、まるで後ろにも目があるみたいでした。あとは、後輩からも結構人気がありましたね。」


――大学時代の思い出は?

「4年間、本当にアメフトが全てというぐらい打ち込みました。部員以外の友達から誘われても練習があったので、断っていましたし。自然と部の仲間といるようになって、休みの日も一緒にいましたね。」

「自分もほとんど同じだけど、キャンパスの再開発と在籍期間とが重なったんで、学内の雰囲気がガラッと変わったのが印象的でしたね。あとは、体育館裏の部室やウェイトルームにいた時間が一番長かったと思います。汚かったけれども、居心地は最高でした。」

「何だかんだ言っても居心地イイですよね。」

龍村

――アメフト部の年間スケジュールについて教えてください。

「2月~4月が基礎トレーニング。4月中旬~6月中旬にオープン戦があって、そのあとは試験期間明けまでオフ。夏休みには地獄の合宿があって、9月中旬からシーズンが開幕、という流れです。社会人はどうですか?」

「うちのチームの場合は、同じように3月から1ヶ月くらい基礎トレーニング期間があって、4月~6月にパールボウル。7月はオフで、8月~9月はまた基礎トレーニングで9月からリーグ戦が開幕して。最長で正月のライスボウルまで、という一年です。」




学生時代との違い 仕事との両立

――社会人チーム所属ということですが、普段の練習はどうしているのですか?

「まず、平日は6時か7時くらいまで仕事をして、それからジムへ行って2時間くらい筋トレをして帰宅、の繰り返し。土日は、練習場が千葉なのでクラブハウスに泊り込んで練習に参加します。日曜日は午前中にミーティングをして、午後から夕方まで練習というスケジュールです。」

――残業で、練習ができないような日もあると思うのですが・・・

「学生時代と違って、毎日筋トレができるとは限らないので、コンディションの維持が難しいです。ただ、土日しかチーム練習ができないので、日々の準備がとても重要になります。平日に体調を崩して、土日のチーム練習の時に満足な練習ができないようではダメだと思います。時間がない日でも自宅でできる手首の簡単なトレーニングは欠かしません。」

司会

「その努力が日本一QBにつながったんですね。仕事との両立は、辛くないですか?」

「特に辛いとは思わないですね。その辺りはあまり考えない様にしていますし、それよりは、早く土日に練習したいと思っています。」

社会人チーム=社会人リーグなのでプロ契約者はいない。仕事との両立が必要で外国人選手も同じ。


練習生から日本一QBへ・・・心境の変化

――最初は練習生としてチームに参加されていましたが、その一年間はどうでしたか?

プレイ

「かなり勉強になりました。普通の攻撃練習ではなく、対戦相手を想定して行う守備練習の時に、仮想対戦チームのQBをやっていましたから。狙い通りのプレーを確実に決めないと練習にならないので、それが逆に自分にとって良い練習になりました。リーグ屈指と呼ばれるうちの守備陣を相手に練習できたのも良い経験です。本当にとてもプラスになりました。」

「タツさんはミスが少ないですよね。」

「うちのチームの守備が良いおかげで、無理しなくてもいいからね。守備陣を信頼して、相手にボールをとられなければいいという気持ちで安心してできるのが大きいと思う。」

――信頼関係というお話がありましたが、普段はなかなかチームメイトと会えないと思います。そのあたりで何か工夫された事はありますか?

「自分の場合は、積極的に攻撃の選手を誘って、練習以外にも食事会や外出する機会を多く持つようにしました。普段は練習のある週末にしか会えないので、それ以外でのコミュニケーションを大事にしています。練習以外でのコミュニケーションをとることによって、次第にその人の考え方や、キャラクターがわかってきて、自然と練習中にも話しやすくなったりしました。でも、これはアメフトだけに限らず、社会で生活する上で、あらゆる部分に関係することだと思います。」

――信頼関係に関して、長尾さんはいかがですか?

「一緒ですね。自然とまとまりや一体感が生まれるのでミーティングも大事だと思いますけど、普段からのコミュニケーションも重要だと思います。
あの・・・自分からもタツさんに質問していいですか?」

――ぜひ!!どんどんお願いします。

「入団してから今季までで心境の変化はありますか?」

「最初は、試合に出場できるだけで嬉しいと思っていたけれど、今年は春からずっと使ってもらっていたので、甘えがなくなって、自分がやらなくてはダメだと思ったのが大きい。」

長尾

「学生チームとの一番の違いってどこですか?」

「やっぱり体格かな。学生でも大きい人はいるけど、社会人の選手はオーラが出ていて風格もあるから、その分もっと大きく見える。テクニックは学生でも上手い人はいるからなぁ。あとは、社会人のほうが平均的にスピードが早い。」

プレイ

「ライスボウルみたいな大舞台でプレーするのは緊張しませんか?」

「試合前は緊張して、本当にヤバい。落ち着かなくて、異様に周りの選手に話しかけたり、からかったりしていた。でも、ユニフォームに着替えて練習しているうちにだんだんと腹がすわってきて、試合になるともう集中しているから、余計なことはそんなに考えなくなる。」

「周りの歓声は聞こえていますか?」

「聞こえているけど、目の前のプレーに集中しているからあまり耳に入ってこないね。例えば、映画を観ているときに字幕に集中していて、音はなんとなく耳には入っている、みたいな感じかな・・・」

「一人ずつ名前を呼ばれて入場しますよね。どんな感じですか?」

「あれイイよ!大きな試合でしかないからね。快感!」


試合中、試合前・・・伝説はマクドナルドから!?

――何か、げんかつぎなどはありますか?

龍村

「特に決まったことないけど、習慣としては足首のテーピングは絶対右足から巻くことくらいかな。あとは、勝っているときは同じリストバンドを使い続けるとか・・・この辺はみんな結構やっているよね?」

「そうですね。自分もソックスを履く足やフィールドに入る足は同じです。」

「そうそう、あとは試合前に『俺はできる』って自分に言い聞かせていますよ。」

「今季実際にやっていたのは、前日に神大のマックに行く事です(一同爆笑)。いつも何人かで練習後に行っていたんですが、たまたま行かなかった日の試合で負けてしまったので・・・ もちろん、優勝を決めた最終戦は行きました。伝説はマックから!!」

――素朴な疑問なのですが、相手の選手とぶつかったりするのは痛くないですか?

「試合中は興奮しているので意外と痛くないものだけど、試合後にシャワーを浴びて体が冷えてくると急に痛くなります。でも、痛いとか言っていられないので・・・」

「自分の場合はタックルされるほうだけど、相手がきたらそのまま自然に倒れます。そのほうが力を逃がしやすいし、変に耐えたりしちゃうと逆に余計な怪我をしてしまう危険性が高まります。ただ、倒れた後はすぐに立ち上がって、『効いてないよ』って相手に心理的なプレッシャーを与えるようにしています。」

――アメフトの魅力とは何だと思いますか?

「様々な要素の詰まった究極のスポーツだと思います。プレーしているときは興奮できるし、タックルで大きな選手を止めたときはスカッとします。」

「見る側からすれば、単純でわかりやすいプレー、例えば、パスでもランでも長く遠くへ進んだビッグプレイがいいんじゃないかな。」

プレイ

――アメフトを通して学んだことは何かありますか?

「何事にも気持ちが大事だということです。うちのチームはモチベーションをうまく引き出してくれるので自分でもコントロールしやすい。みんな、本当に好きで集まって来ていて、同じ目標にむかっているのもいい状態を維持できる原因じゃないかな、と思います。その点では、学生のほうが難しいと思うけど、どう?」

「そうですね。今季、主将をやって一つになることの難しさがよくわかりました。でも、特別な経験ができてよかったです。試合中も、プレーだけでなく大声を出してチームを鼓舞していました。あとは、ちょっとクサくなっちゃいますけど、努力することの大切さを学びました。人間関係や人との接し方は、スポーツを通して学んだわけですが、こういうことはスポーツに限らず一生あることなので、アメフトで培ったことをこれからの人生に活かしていきたいです。」




更なる飛躍に向けて 満足したら終わり

「とりあえず、競技者としては終わりなのですが、何らかの形でアメフトに関わっていけたら最高です。今後は、ほかのことでもいいので『これをやったぞ』と言える人生にしていきたいと思います。」

「う~ん、やっぱり連覇したいですね。今季のチームが最高だったとは言われたくないので、常に上をめざしていきたいと思います。個人のことよりも、まずはチームとして勝てるQBになりたいです。その先に、日本代表アリーナフットがあるなら挑戦したいと思います。」

日本代表=2007年、日本(川崎市)で第3回W杯が開催される。
アリーナフット=室内で行う縮小版アメフト。アメリカでは大人気のプロスポーツ。スピード感とわかりやすさが魅力。3月に米国遠征する日本選抜メンバーに龍村選手が選出されている。

――座右の銘や好きな言葉はありますか?

「今までは、‘No Pain. No gain.(痛みなくして得るものなし)’だったけど、最近は、『今を大事に』かな。」

「『日々全力、一生懸命』です。」

――アメフト部の後輩や神大生に対して一言お願いします。

だるま

「終わってから後悔しても遅いので好きなことをやれている今の状況を大事にして欲しいと思います。あと、そんな偉そうなことは言えませんが、今は何度も同じことを言われて、『うるさい』とか『うっとうしい』と思っているかもしれませんけど、いつか言われたことについてわかる時がくると思うので、それを忘れずにがんばって欲しいと思います。」

「おぉ~良いこと言うね。長尾先生の言う通りなので特にないです(笑)」

「いやいや、何か言ってくださいよ。」

「そうだなぁ、勉強でもスポーツでも何をやるにしても、それを楽しんでやって欲しいと思います。辛い事もあると思うけど、いつか必ずそれが活きてくるのでその状況を楽しむこと、そして満足せず常に上をめざすことが大切だと思います。」

――最後に、お互いに何かあれば・・・

「いま思い出しましたが、しょっちゅう筋トレ中にタツさんにからかわれていました。その人が、今では日本一のQBですよ!日本代表になったりしてもこういう関係でいられたらいいなと思います。いろいろと忙しいと思いますが、たまには遊びに誘ってください。」

「いや、もう俺は大人だから・・・(笑)」

――お二人とも本当にありがとうございました。


( 2006年1月30日(月)対談。聞き手・飯沼大輔=JINDAI Style学生編集スタッフ )