Nakada Norihide

中田 典秀 准教授

所属
化学生命学部
応用化学科
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専門分野

汚染質動態、環境分析技術、環境計測、環境化学

キーワード

Profile

出身地/神奈川県伊勢原市
子供の頃の夢/考古学者
愛読書/ダン・ブラウン、ジェームズ・ロリンズなどのSF小説
好きなTV番組/お笑い番組
好きな映画/『スパイ・ゲーム』

ヒトと野生生物にやさしい水環境を目指し、河川や下水に含まれる化学物質を調査する。

ヒトの体から出る化学物質が魚に影響を及ぼす?

私たち人間は、暮らしのなかで使用される洗剤や薬などのさまざまな化学物質を下水に流しています。そうした化学物質のなかには、既存の排水処理技術では処理できず、下水処理場を経由して河川へ排出されているものがあります。これによって河川を泳ぐ魚がバタバタ死んでしまうといった急性な影響はないのですが、例えば、「魚のオスがメスになってしまう」といったことや、行動がおかしくなるということが起こります。これは、人間の尿に含まれる女性ホルモンや抗うつ薬の成分が河川へ流れ込むことが原因であると言われています。性比率が変わったり、生殖行動に影響があると、次第に個体数が減っていくため、長期的に見るとその影響は見逃せません。

私の研究では、河川や下水処理場などを調査し、こうした魚や水生生物に影響が出てしまうような化学物質を分析しています。汚染実態を把握するとともに、将来的には人間と野生生物両方の健康を両立する化学物質利用につなげることができればと思っています。

また、抗うつ薬を例に出しましたが、薬の成分には体の中で完全には分解されず、下水処理場でも処理されずに河川に流れるものがあります。例えば、インフルエンザの治療薬なども河川に排出されるわけです。これを利用し、河川の中に薬の成分がどれくらい含まれているのかを調べれば、それが流れてきた上流地域でインフルエンザがどれくらい流行っているのかを予測することができます。日々変わっていく患者数の分布を、保健所の集計などを待たずに素早く検出できる可能性があるのです。こうした水環境中の環境汚染物質を調べ、特定疾病の患者数だけでなく、その上流の人口や排水の処理レベルといったさまざまな情報を指標化する研究も進めています。

下水道の価値を高めるサポートをしていきたい

子どものころから自然が身近だったこともあり、山や川で遊ぶことがよくありました。そうしたなか、よく遊んでいた地元の山で酸性雨の影響により樹々の立ち枯れの問題が起きていると知ったのが中学2年生のころ。神奈川大学でこの問題を研究している先生がいると、中学校で配られたプリントでたまたま見ました。そこから身近な自然の問題に取り組みたいと思い続け、神奈川大学に進学。酸性雨を研究している井川学先生のもとで学ぶことができました。

研究するなかで河川や海など水環境に強く興味を抱くようになり、大学院修士課程と博士課程は他大学に進学しました。修了後、河川や下水処理場の調査や研究を行っている国立研究開発法人土木研究所に5年間所属していました。下水処理分野の研究は進んでいて、水環境の改善に大きく貢献しています。その一方で、次から次へと新しい化学物質が出てきて、処理できない化学物質がどうしても存在します。今後、私の研究を通して、下水道の役割をアピールするとともに、下水処理場の処理技術を高めるための情報提供をしていきたいと思っています。

私が担当している「分析化学」という科目では、分析技術の基本だけでなく、主に物理化学や有機化学を学ぶために必要な化学量論計算などの計算方法や理論を教えています。高校時代から化学の実験は得意だけど物理や数学は苦手だったという学生も多くいますが、この知識が今後のベースになるので、ぜひここで苦手を克服してほしいと思っています。私も学生のころはそうした計算が得意ではなかったので、演習問題を用意するなど、わかりやすく理解してもらえるよう努めています。

在学中は、社会に出て武器となる何かを見つけたり、自分磨きの投資に使えたりする時間が多くあると思います。卒業論文を始めとして、ぜひひとつのことに集中する時間を楽しんでみてください。

環境鑑識学研究室

水環境中の有機汚染物質の動態把握と汚染情報をもとにした流域の評価

我々の日常生活で使用される化学物質のなかには、既存の排水処理技術では十分に処理されず、下水処理場等を経由して水環境へ排出されているものがあります。そのような化学物質のなかには、極低濃度でも水生生物の生殖や行動に悪影響を及ぼすものがあります。そこで当研究室では、今後の人間と野生生物両方の健康を両立する化学物質利用に向け、都市域の河川や海域、下水処理施設におけるこれらの汚染実態の把握を目指した調査・研究を行っています。また、一部の環境汚染物質のなかには、河川水や下水中の濃度や比が、その上流の人口や排水の処理レベル、特定疾病の流行状況、病原微生物による汚染実態などの流域情報の指標となりうるものがあります。そのため、これらの指標化についての研究も推進しています。

Photos

  • 駆け出しのころに『Water Research』誌という科学雑誌に投稿した論文が、ある期間に同誌の世界被引用数のTop25に入ったとのことで、同誌からもらった記念品。今でも励みになっています

  • 中〜大型の研究費が安定して獲得できるようになったころに少し無理して導入した液体クロマトグラフ─四重極飛行時間型質量分析計。この装置のおかげで研究の奥行きがさらに深まりました

SDGsの取組み

地域課題

SDGs・地域課題について

ヒトの便益と環境影響のバランスの取れた化学物質の利用、化学物質による生物影響、特に次世代影響の評価、下水道事業の環境保全への貢献を定量的に評価し今後の推進などに貢献するため、微量有機汚染物質による水環境の汚染実態の把握や、汚染実態からの流域評価を行っています。

Teacher's News

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