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学生時代に、何か誇れるものを一つ極めてほしい。山口 純一郎さん/神奈川県立 横浜修悠館高等学校/神奈川県出身

学生時代に、何か誇れるものを一つ極めてほしい。山口 純一郎さん/神奈川県立 横浜修悠館高等学校/神奈川県出身

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恩師の存在をきっかけに、教員という仕事に憧れを抱く。

これまでできなかったことに挑戦し、今の自分より0.1秒でも速く、1cmでも前へ。学生時代に陸上を通じて味わった高揚と達成感を伝える側に立ちたくて、私は保健体育の教員を志しました。
きっかけは、2人の恩師の存在です。一人目は、中学2年生のときの担任だった数学の先生。生徒と一緒に学校生活を楽しみ、文化祭では自ら演劇に出演するような人気者の先生でした。その気さくな笑顔と、生徒に近い目線で接してくれる姿勢に憧れ「学校の先生になるのもいいな」と思い始めたのです。そんな中、進学した高校で出会ったのが、陸上部顧問で、保健体育の教員でもあったもう一人の恩師でした。生徒に「もっと速く走りたい」「もっと高く跳びたい」という向上心を持たせる熱心な指導が記憶に残っています。先生のリードのもと、部員全員が自主的に練習に励む環境ができあがった中で、気が付けば私も本気で陸上にのめり込んでいました。高校3年次に三段跳びでインターハイに出場することができたのは、そのような先生の指導のおかげだったと思います。そして、このとき「大学でも競技を続けたい。将来は先生のように、陸上を教えたい」という思いが強まり、“陸上”と“教員”という二つの目標が一つになりました。神奈川大学から「うちで陸上をやらないか」と誘いがあったのはその頃です。聞けば、スポーツや健康について学べる人間科学部が新設され、そこでは保健体育の教員免許も取得できるとのこと。私は二つの希望がかなう神大への進学を迷わず決めました。
入学した人間科学部は、「からだ」「こころ」「社会」の三つの側面から人を探究する学部。メンタルを整える方法や食事・天候・からだのコンディションを記録する方法を授業で教わると、入部早々から陸上競技部の練習にその方法を用いて、日誌を付けながら積極的に競技力分析に取り組みました。コーチや先輩方はこれまでのトレーニング方法を押し付けることもなく、私の試行錯誤を温かく見守ってくれました。練習メニューを考えては実践し、日誌を見て振り返り、また挑戦する。その継続が功を奏し、3年次には記録が飛躍的に伸びました。全日本インカレの走り幅跳びで自己最高、しかも神大陸上競技部歴代1位の記録を出したときの達成感は忘れられません。この経験は、今も仕事をする上での活力になっています。
陸上一筋だった私の転機は、4年次に経験した教育実習でした。同じクラスの中でも、運動が得意な生徒と苦手な生徒では行うべき指導が全く違う。例えば、運動嫌いな生徒には、スモールステップの目標設定で自信を積み上げることが必要になります。教える側に立ってみると、教員という仕事の難しさは想像以上でした。「何気なく振る舞っているように見えた中学や高校の先生方は、私たちに目を配り、考え抜いて指導してくれていたんだ。自分も、先生たちのように生徒一人ひとりの挑戦を支えられる人間になりたい」―そう思い至り、私の教員への志はより強くなりました。
しかし、教員になるまでの道のりは簡単ではありませんでした。当時、学生最後の陸上競技大会を控えていた私は、試験勉強の山場で陸上を優先したこともあり、教員採用試験の結果で惨敗してしまったのです。卒業後は高校の非常勤講師となり、保健体育の授業と陸上部の指導をこなしながら空き時間で採用試験に向けた勉強を続ける毎日。ただ、不思議と焦りはありませんでした。教員となって陸上を指導したいという決意は揺るがなかったからです。その後、講師となって4年目で県立高校の採用試験に合格。長年の夢をかなえることができました。

生徒一人ひとりの、挑戦を支えたい。

全日制の高校に5年勤務し、現在は通信制高校で保健体育を教えています。通信制は自宅でのレポート作成と通学して授業を受けるスクーリングを組み合わせた学習形態で、多様な目的を持つ幅広い年代の生徒が集まっています。病気などさまざまな理由で実技に参加できない生徒がいることや、コミュニケーションの苦手な生徒との距離感など、赴任当初は全日制高校との違いに戸惑いました。そこで気付いたのは、どんなに経験を積もうとも、生徒一人ひとりと信頼関係を築くにはゼロから向き合うほかないということ。運動も人との交流も苦手で、バドミントンのシャトルをラケットに当てることすらできなかった生徒が、ラリーを続けられるようになってチラッと笑顔を見せてくれた瞬間は、教員になったばかりの頃のように胸が熱くなりました。生徒のペースに寄り添うことの大切さを感じるのはそんなときです。
私は、教科担当や陸上部顧問の他、キャリア・進路担当としても指導を行っています。大学進学を目指す生徒には、入試科目に合った授業選択をアドバイスする。社会参加が目標の生徒には、アルバイトでの就労をサポートする。一人ひとりに向き合い、彼らの挑戦をどう支えるかを考えるのが、教員としての今の挑戦です。壁にぶつかったときも自分を信じて行動できるのは、陸上という誇りがあるから。何かに打ち込んだ経験の先にある達成感は、社会に出た後も自分の中に残るものです。皆さんも研究やスポーツ、ボランティアなど、何か誇れるものを一つ、学生時代に極めてみてください。それは就職活動だけでなく、きっと長い人生の糧になるはずです。

※内容はすべて取材当時のものです。

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