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2017.09.22

光合成水素生産研究所プロジェクト研究員の永島賢治 博士を第一著者とする論文が、PNAS(アメリカ科学アカデミー紀要)に掲載されました!

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本件のポイント
  • ●本学光合成水素生産研究所プロジェクト研究員の永島賢治 博士を第一著者とする、光合成光捕集タンパクの構造と機能に関する論文が、2017年9月19日、科学専門誌PNAS(アメリカ科学アカデミー紀要)に掲載されました。
  •  
  • ●雑誌名:PNAS(アメリカ科学アカデミー紀要)
  • ●論文名:Probing Structure–Function Relationships in Early Events in Photosynthesis Using a Chimeric Photocomplex
  • ●著者:K. V. P. Nagashima(神奈川大), M. Sasaki(茨城大), K. Hashimoto(神戸大), S. Takaichi(日本医大), S. Nagashima(首都大), L. Yu(岡山大), Y. Abe(茨城大), K. Gotou(茨城大), T. Kawakami(茨城大), M. Takenouchi(茨城大), Y. Shibuya(茨城大), A. Yamaguchi(茨城大), T. Ohno(神戸大), J. Shen(岡山大), K. Inoue(神奈川大), M. T. Madigan(南イリノイ大), Y. Kimura(神戸大), Z.-Y. Wang-Otomo (茨城大) 以上7大学所属の18名の研究者
  • ●掲載URL:http://www.pnas.org/content/early/2017/09/20/1703584114.abstract

研究概要

光合成生物は、アンテナ複合体と呼ばれる太陽光を非常に高い効率で吸収する装置を持っています。紅色光合成細菌のアンテナ複合体はLH1と呼ばれ、LH1はバクテリオクロロフィルやカロテノイドといった光合成色素がタンパク質の内部で極めて精密に配置された構造を持っています。今回は好熱性の紅色光合成細菌Thermochromatium (T.) tepidum[1]のLH1を遺伝子工学により、常温で生育する別種の紅色光合成細菌に導入してその内部構造や機能を調べました。この光合成細菌は好熱性であるばかりか、常温性のものよりも長い波長(赤外線の領域)の光を吸収します。今回の研究で、その仕組みの鍵を握っているのがT. tepidumのLH1の内部に結合しているカルシウムイオンであることが示唆されました。カルシウムイオンがLH1内部の特定の部分に結合することで熱に対して安定となり、より長波長側の光を吸収できる構造が保たれていることが解明されました。この研究成果は天然の光合成の謎を解くばかりでなく、人工光合成の研究への応用にもつながるものと期待されます。

研究の背景

光は波としての性質を持っていて、その波の周期を長さで表したものが波長と呼ばれ、人間の目で感知できるのはおおよそ400nmから750nmの波長を持つ光です。この範囲の波長の光は可視光と呼ばれ、この範囲より短い波長の光は紫外光、長い波長の光は赤外光となります[図1]。植物の光合成では700nm前後の赤く見える光が主に使われ(550nm前後の緑色の光は利用されないので葉は緑色に見える)ますが、細菌の光合成では750nmを越える赤外光が利用されています。このような長い波長の光を利用できるのは、植物のクロロフィル(葉緑素)とは化学構造が少し違うバクテリオクロロフィルという色素を光捕集に使うためで、研究によく使われる多くの常温性(至適生育温度30℃前後)の紅色光合成細菌では880nm前後の赤外光を吸収することが知られています。

ただ中には変わり者もいるのが生物のおもしろいところで、好熱性(至適生育温度50℃前後)のThermochromatium tepidumという紅色光合成細菌では、さらに長い915nmの波長の光を吸収することが知られていました[図1]。同じバクテリオクロロフィルを使っていながら、なぜこのように異なる波長の光を利用できるのか不思議でしたが、近年、茨城大の大友博士らのグループがその光捕集複合体(バクテリオクロロフィルとタンパク質が結合した高次構造)の結晶化と可視化に成功し[2]、バクテリオクロロフィルの近傍にカルシウムイオンが結合していることを明らかにしました[図2]。

このカルシウムイオンが光吸収波長の違いや熱耐性の原因となっていることに疑問の余地はありませんが、理論的な説明を確立し応用研究を進めるためにはカルシウムイオンが複合体中のどのタンパク質のどの部分(アミノ酸)と相互作用しているのか、さらに詳しく調べる必要があります。こうした分子レベルの研究課題を解決するには遺伝子を操作してタンパク質の構造を人為的に変え、その影響を観察するというのが有効な方法です。しかしT. tepidumという細菌は光合成以外の生育手段が無いうえ好熱性であるため、遺伝子操作が極めて困難であるという問題がありました。

研究対象とした好熱性紅色光合成細菌Thermochromatium tepidumの顕微鏡写真(M. T. Madigan博士提供)

研究の内容

私たちは、遺伝子操作が可能な常温性の紅色光合成細菌であるRhodobacter sphaeroidesという菌を研究材料として用いて、神奈川大学で培った遺伝子の入れ替え技術[3,4]を活用しました。この菌の光捕集複合体は他の多くの菌と同様に880nmの光吸収ピークを示しますが、そのタンパクの遺伝子を除去し、代わりにT. tepidumの光捕集タンパク遺伝子を導入したところ、光吸収ピークが918nmに移動しました[図1]。このことは、特殊なT. tepidumの光捕集複合体を、R. sphaeroidesという別の一般的な菌種に合成させることに成功したことを示します。合成された光捕集複合体にキレート剤を加えて金属イオンを除去すると光吸収ピークは880nmに移動したことからカルシウムイオンの結合も確認されました。このような遺伝子入れ替え株をベースとして、T. tepidumの光捕集タンパクに様々な点変異(特定のアミノ酸のみを変化させる変異)を加えてR. sphaeroidesに導入し、光吸収ピークの位置や微細な構造変化を調べることで、光捕集タンパクのうちアルファ・サブユニットと呼ばれるタンパク質の先頭から49番目のアミノ酸(α-D49)と、ベータ・サブユニットと呼ばれるタンパク質の終末端に位置するロイシン(β-L46)がカルシウムの結合に必須であることを明らかにしました[図2]。

  • 図1図1
  • 図2図2

図1 紅色光合成細菌T. tepidumR. sphaeroidesおよび光捕集タンパク遺伝子入れ替え変異株(TS2株)の細胞膜標品による光吸収スペクトル。光吸収波長と色の関係を下部のカラースケールで示している。

図2 T. tepidumの光合成色素タンパク複合体の立体構造。光化学反応中心のL, M, H, Cサブユニットと、16対の光捕集タンパクαおよびβサブユニットから成っている。カルシウムイオンを赤で示し、周囲のタンパク構造とともに拡大して示した。

[1] Madigan MT (1984) A novel photosynthetic purple bacterium isolated from a Yellowstone hot spring. Science 225, 313–315.


[2] Niwa S, Yu L-J, Takeda K, Hirano Y, Kawakami T, Wang-Otomo Z-Y, Miki K (2014) Structure of the LH1-RC complex from Thermochromatium tepidum at 3.0Å, Nature 508, 228-232.

[3] Xiong J, Fischer WM, Inoue K, Nakahara M, Bauer CE (2000) Molecular evidence for the early evolution of photosynthesis, Science 289, 1724-1730.

[4] Nagashima KVP, Vermeglio A, Fusada N, Nagashima S, Shimada K, Inoue K (2014) Exchange and complementation of genes coding for photosynthetic reaction center core subunits among purple bacteria, J. Mol. Evol. 79, 52-62.

今後の展望

一般的に光の持つエネルギーは波長が長いほど低くなります。今回の研究において確立された変異導入系は、T. tepidumの光捕集複合体が吸収する長波長(低エネルギー)の赤外光がどのようにして光合成の反応を駆動するかを評価するための良いモデルになるでしょう。また、光合成による物質生産やエネルギー生産を目指すとき、利用できる光の波長範囲を広げたり、タンパクの熱耐性を向上させるなど、細菌を利用した人工光合成の技術革新にもつながると思われます。

本研究について

本研究は下記の支援を受けて実施されました。

  • 国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業/個人型研究(さきがけ)研究領域:「光エネルギーと物質変換」(研究総括:井上晴夫 首都大学東京 人工光合成研究センター長)
  • 公益財団法人東京応化科学技術振興財団 研究費助成
  • 日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究C
  • 文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究 「人工光合成」
  • 文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

本件に関するお問い合わせ先

【研究に関すること】
光合成水素生産研究所 所長 井上 和仁(神奈川大学理学部生物科学科 教授)
大学連絡先:0463-59-4111(代) (内線:2241)
E-mail:inouek01@kanagawa-u.ac.jp

神奈川大学 研究支援部 平塚研究支援課
電話:0463-59-4111(代)
E-mail:info-hshien@kanagawa-u.ac.jp


【報道に関すること】
神奈川大学 広報部 広報課
電話:045-481-5661(代)
E-mail:kohou-info@kanagawa-u.ac.jp

プレスリリース発信元

〒221-8686 横浜市神奈川区六角橋3-27-1
神奈川大学 広報部

電話:045-481-5661(代)

FAX:045-481-9300

mail:kohou-info@kanagawa-u.ac.jp

URL:http://www.kanagawa-u.ac.jp

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