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【展示企画】宇宙への進出(7/8-10/15)

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今回の展示では、人類が宇宙へ拡大する上で考えなければならない「宇宙資源」「生活」「宇宙への進出方法」などについて紹介します。

他にも、宇宙関係の書籍や実際に宇宙で食べられている宇宙食も紹介していますので、是非、併せてご覧ください。

展示期間

7月8日(土)~ 10月15日(日)

会場

神奈川大学図書館1階展示コーナー

お問合せ

神奈川大学工学部 宇宙エレベータープロジェクト(江上研究室)

電話番号

045-481-5661(代)

解説

 昔、人々は船で大海原に進出する時、星々を目印に自分の位置を確かめていました。現代の人々はその星々に向かうために宇宙に飛び出し始めました。今や地球の周りの宇宙空間には多くの人工衛星が飛び交い、船や車の位置はGPSで知ることができ、国際宇宙ステーション(ISS)には人が住み生活するほどに人類は宇宙に進出しています。

 近年、世界の宇宙進出の動きは短期間で激しさを増してきました。中国が独自に開発した宇宙ステーション「天宮2号」や、無人宇宙貨物船「天舟1号」の打上げの成功、米国ではベンチャー企業が安価なロケット打上げ事業などに次々と参入して実績を挙げています。

 また、国内の動きとしては、宇宙航空研究開発機構JAXAが、2030年ごろに日本人宇宙飛行士による月面探査を目指す計画を文部科学省の委員会で提案しました。政府は、この計画などについて議論し、来年3月までに宇宙探査の基本的な考え方を示す方針です。

 すでに、日本の大手ゼネコン会社では、地球とは異なり使える材料が限られる月での建造物建設に向けた原材料やロボット技術の研究をJAXAと共に進めています。

 一方、海外でも革新が著しい3Dプリンター技術を用いた宇宙建築の研究が行われています。NASAは、賞金250万ドルをかけたコンペティション(注1)を設け、多くの技術者、研究者がこの研究分野に参加するように促しています。

 そこで今回の展示では、人類が宇宙へ拡大する上で考えなければならない「宇宙資源」「生活」「宇宙への進出方法」などについて紹介します。

宇宙資源
米国ベンチャーDeep Space ndustries社の小惑星採掘事業のイメージ
米国ベンチャーDeep Space ndustries社の小惑星採掘事業のイメージ

 人類が宇宙に求める物の一つとして資源があります。その宇宙資源を知る手軽な方法は隕石です。アメリカのカーネギー研究所が行った火星隕石の分析では、火星内部のマントルに豊富な水が存在する可能性を示す手がかりを発見しています。(注2)水は宇宙空間において貴重かつ確実に必要な物質であり、水素や酸素を作り出すことができる重要な宇宙資源です。今回、世界有数の隕石を保有する極地研究所から南極観測隊が採取した火星起源の隕石を貸していただき実物を展示しました。

 国立極地研究所では、総数17756個の南極隕石を収集し、研究を行っていますが、火星隕石は13個しか発見されていません。(注3)今回は、そのひとつをご覧いただけます。また、生物資源として宇宙空間でも生存できる地球の共生体が発見されたことの展示や宇宙空間に満たされている色々な要素もセンサーで捕らえ解析することで貴重な知的資源になることを提案しています。

生活食事

 宇宙に進出し生活する為には水の再利用と食事が必要不可欠です。今回、日本のメーカーがJAXAと共同開発した尿から飲料水をリサイクルするシステムの紹介を行います。また、宇宙食の歴史と実物の展示の他、スピンアウト技術により製品化された市販品の例も展示しました。一方、特殊な3Dプリンターで食べられるピザを作る実験も行われていますが、生野菜は作れないので室内で食物を栽培する実験が宇宙ステーションで行われている例を紹介します。

生活空間

 宇宙への進出では惑星などに到達して、そこで長期間生活を始める必要がありますが、その為には現地の原料を基に居住スペースを建設しなければなりません。マサチューセッツ工科大学の最新の構想では大型の3Dプリンターロボット(注4)を使い建築物を出力する考えがあり、実際に実験も行われているので、その例を展示しています。4を使い建築物を出力する考えがあり、実際に実験も行われているので、その例を展示しています。

宇宙への進出方法

 地球を飛び出し宇宙空間に出るには、今はロケットしかありません。ロケットの歴史は古く、その起源は11世紀頃に兵器として発明され、20世紀には大型化され、ついに宇宙進出の為に利用されて人類を月に到達させました。しかし、ロケットは高価で使い捨てであり、重量の90%が燃料で占められ、輸送できる重量が10%程度と非効率な輸送機関です。一方、19世紀後半に構想された宇宙エレベーターは、静止軌道からテザーと呼ばれるケーブルを地上まで垂らし、そのテザーをエレベーターのように昇降して宇宙空間に行く新規な機構なので、繰り返し利用できコストも安いと考えられています。宇宙への進出方法であるロケットの歴史と宇宙エレベーターの可能性について展示しています。

宇宙エレベータ―の研究
大林組の宇宙エレベーター建設構想
大林組の宇宙エレベーター建設構想

 また、本学工学研究科機械工学専攻(江上研究室)の長島祥氏が製作した、宇宙エレベーターのモデルクライマーも展示いたします。宇宙エレベーターの原理では、テザーと呼ばれるワイヤーやリボン状の紐をエレベーターの箱の部分にあたるクライマーが昇り降りすることで移動できると考えてられています。ここで展示するモデルクライマーは、ロープ用クライマーの姿勢安定化制御を研究するために製作されたものです。宇宙エレベーターの技術を競うSPEC(Space Elevator Challenge)2014にも、このクライマーモデルで出場しました。その時に、昇降高度1150mという世界最高高度記録を打ち出し、この記録は未だに破られていません。

 他にも、宇宙関係の書籍や実際に宇宙で食べられている宇宙食も紹介していますので、是非、併せてご覧ください。

展示協力

参照元

(注1)3D-Printed Habitat Challenge

https://www.nasa.gov/directorates/spacetech/centennial_challenges/3DPHab/index.html

(注2)Francis M.McCubbin,Erik H.Hauri,Stephen M.Elardo,Kathleen E.Vander Kaaden,JianhuaWang,Charles K.Shearer “Hydrous melting of the martian mantle produced both depleted and enriched shergottites” Geology 40, 683–686

(注3)大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立極地研究所 極域科学資源センター 

http://www.nipr.ac.jp/center/meteorite.html

(注4)“Technology developed at MIT could enable faster, cheaper, more adaptable building construction.” MIT News

http://news.mit.edu/2017/3-d-printing-buildings-0426